星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
「大丈夫ですか?聞こえますか?」
誰に言ってるの?私?私は大丈夫。
それより早く行かせて。大切な試験なの。これに受からないと私、先生との夢を叶えられない。
「誰か、誰か救急車!それと…AEDを!」
誰か怪我したんだろうか?でもごめん、私行かなきゃだから、どうしよう、助けるのあんまり手伝えないよ?
「大丈夫ですか!?」
肩を揺すられ眼を開けた。眼を開けて初めて自分が眼を閉じていたことに気付く。
「…はい」
掠れる声で答えたけれど身体が動かない。
「私…行かなくちゃ、行けないんで…」
「もうすぐ救急車来ますからね!」
「あの…」
救急車じゃ試験に行けないんだよ。
私は身体を起こそうとする。でもやっぱり身体は動かない。
(え…何で…?)
動かない身体に焦る。焦っても脚に腕に力が入らない。
何で動かないの!?しっかりして私の身体!
あぁ!どうしてもっと丈夫に出来てないんだろう!!
思い通りにならない身体が悔しくて涙が込み上げた。それが頬をぽろりと伝う。
「どこが痛いですか!?」
そんなのどうだっていい。試験に、試験に行かせて!
サイレンの音が近付いてくる。
ねぇ!動いて!動いて!動いて!
止めどなく涙が溢れてくる。
こんな時思い浮かべる顔は、ただ一人─
(先生…先生!)
ごめんなさい。あんなに私のこと応援してくれたのに応えられなくてごめんなさい…
けたたましいサイレンが私の直ぐ足元で止まった。涙の向こうに白と赤のユニフォームが滲んで見えた。
「もう大丈夫ですよ」
救急隊の人が優しく声を掛けてくれる。でも…
(全然大丈夫じゃないよ!試験に行かれないもの!夢が…先生と私の夢が叶えられないもの!!)
私は背中を震わせて泣くことしかできなかった。
*