星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
「南条」
先生の声が近付く。
「ッ……」
緊張で更に全身がきゅっと竦む。
「南条は何を謝ってるの?」
「……」
「南条が俺に謝るなら、謝らなきゃならないのは俺の方だ」
(え…?)
「君は俺が叶えられなかった夢を代わりに叶えてくれようとした?だとしたらそれを押し付けたのは俺だろう?」
「違…っ」
「そんなにまで南条を追い詰めてると思わなかった。申し訳ない」
先生が頭を下げる気配がした。
「違うよッ!!」
頭の布団を跳ね除ける。
「違うよ!私が、私がやりたかったの!私が外大に行って、私が言語学の研究をしたいって思ったの!先生は関係ないよ!!」
先生の栗色の髪に叫ぶように言った。
「だから…だから先生、顔上げて?先生は悪くない…」
先生がゆっくりと顔を上げる。そして柔らかく微笑んだ。
「そしたら、南条ももう俺に謝らないで」
「……」
「納得いかないって顔してんな」
「……」
私は優しく細められた先生の瞳を見ていられなくて眼を逸らす。窓から射し込む夕陽がシーツの白に反射して思わず眼を閉じると、睫毛の先に残った雫がはらりと落ちた。
「じゃあ、お前のために勉強を教えたり相談に乗ったりしてきた俺に悪いと思う?」
「……」
答えられなくて唇が震える。
先生はふっと笑うと、ベッドの縁、私の隣に腰掛けた。