星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

「ねぇ南条。俺はね、もし南条の夢がもっと違うものだったとしても俺は今ここにいたよ」

 慈しむような優しい声が囁かれる。


「例えば容姿が好みだからとか、地位とか財産とか、それが愛になる?恋に落ちる契機はそうだとしても、それ以上の何の意味もないだろう?
 それと同じ。お前の追い掛ける夢が俺の追い掛けていたものと同じだからなんて、そんな理由で南条のことを愛したりしない。どうして君を愛するかなんて、本質はそんな単純なものじゃないんだ。

 だから南条の夢がもっと別のものだったとしても、間違いなく俺は君を愛した。君の傍にいたいと願った。

 そしてこれから、君の夢が叶わなかったとしても、夢が違う夢に変わったとしても、俺は君を支えていく。

 なりたい自分になりたい君を、愛している。



 どんな君でも、俺は南条舞奈を愛している」



「先生…!」



 初めから分かりきってた。


『だからさ、俺、南条の夢《それ》を一緒に探したいと思う』


 先生は私に自分の叶わなかったルートを代わりに進んで欲しいなんて思ったことはなかった。初めから私に私の本当に生きたい生き方を見つけて、そこへ向かって進んで欲しい、と思ってた。その為にいつも傍にいて、時には手を広げてくれていた。そんなこと今更分かったことでもなくて。


(だから私も今貴方を、愛してる─)


 こんなことになってしまって、ただひたすらいつでも惜しみ無い愛をくれる先生に申し訳ない気持ちには変わらないけれど、こんな風に自己嫌悪に陥って、躓いて倒れて起き上がれなくなってる、そんな私を見せる方が申し訳ない。
 そんな後ろ向きに生きている私を先生は見たい訳じゃない。好きになったわけじゃないから。


『そういう諦めないとこ。オーストラリア訛りに果敢に挑むとことか』

『意外と男前で』

『俺は惚れちゃうけどな?』


(私はもう一度立ち上がれる。

 貴方が、いるから──)



 腕を緩めた先生が私の瞳を覗き込む。そして、少し照れたように苦笑して言った。


「まだ4月にならないのにフライングもいいとこだな、俺」


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