星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

「南条さ、」


 不意に先生が私を呼ぶ。


「は、はいっ!」

 呼ばれただけで鼓動が激しくなる。


 にもかかわらず、知ってか知らずか先生の言った言葉は…



「南条って彼氏いるの?」



(ええっ!)

 なんでそんなこと聞くの!?


「いっ、いない、ですよっ!」

「そうなんだ」

「……」


 先生の答えは思ったより素っ気ない。


(なんだったの…?今の)


「あっ、あの…」

「ん?」

「なんで…そんなこと、聞く、の?」


 私の問いに先生がははっと笑った。


「そのワンピース」

「…え」

「高校生の女の子がデートとかで着そうだなーと思って」

「!」


 み、見透かされてる…

 すごい勢いで頬が熱を持つ。


「そんなことっ、ないです!普段着、普段着!塾にも着ていくしっ!」

「くっ!」


 思わず全力否定すると先生はまた笑った。


 お気に入りのワンピース。クローゼットで一緒にしまってあった香水のジャスミンとサンダルウッドの香りがほんのり香る白いワンピース。

 本当は塾になんか着ないけれど…

 とりあえずそれっぽく誤魔化せた、よね…?


 私は真夏の陽射しのせいだけでなく熱い頬をそっと押さえた。

           *
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