星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 図書館では就職関係の本だけでなく、私の好きな小説なんかも見て廻った。

 先生が

「南条が普段好きな本からもヒントが得られるかも知れないよ」

と言ったから。


 私が気に入っている本を幾つか先生に見せると、

「南条これなんかも好きじゃない?」

と言って、先生が似たテイストの本を見繕って紹介してくれた。

 それらは、背表紙に書かれたあらすじを読むと確かに私好みのもの。


「確かにこの感じ好きかも」

 私が言うと先生は満足げに頷いて、

「なんか俺、南条の好み分かってきたかも」

と眼を細めて満面の笑みでほころぶ。


「理屈っぽい系、好きだろ?」

「あ!そうかも!風邪薬のCMとかもしんどそうな女優さんが最後にすっきり笑顔になるやつより、図入りで効果を説明してるやつの方が好きだもん」

「あー分かる分かる!俺もその方が好き。なんか効きそうな気がするし」

「そうそう!」


 こんな些細なことでも先生と好みが合うと嬉しい。

 他愛ない会話。

 幸せな気持ち。


 やっぱりずっとずっと先生と一緒にいたい。


 私ももっともっと先生のことを知りたい。


 図書館で過ごすふたりの時間。

 先生にとっては何でもない時間でも、私には…


 私には、かけがえのない宝物なの。


           *
< 38 / 316 >

この作品をシェア

pagetop