星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 が、それも束の間。


(あっ!時間!)


 私は不意に我に返り、腕時計を確認する。

(あと5分しかないじゃんっ!)


「ありがとうございました!失礼します!」

 私は彼の言葉を遮って、一礼すると慌てて改札口へと走り出す。


「えっ、あぁ、うん」


 一瞬王子様が大きな瞳を更に見開き、驚く表情が見えた。


(なんてスマートに対応出来るんだろ…

 しかも…凄い…綺麗な男の子…)

 塾に向かって走りながら私の胸はドキドキしていた。


 それは、喋れなくて緊張したから?

 あるいは走って心拍が上がったから?


 それにしても…

 と、ふと思う。


(あのキャリーバッグ…旅行中かな?

 じゃあ、もう逢うこともないよね、きっと…)


 まぁいいや。

 今日はイケメンさんに助けられてラッキーだった。

 朝から喧嘩してイライラしてたけど、これでチャラってことにしようかな?


 そう思っておくことにしよう。


    *   *   *
< 4 / 316 >

この作品をシェア

pagetop