星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

「えと…この文、いくつかの文から出来てる文だとは思うんですけど…」

 恐る恐る口を開くと岩瀬が小さく溜め息を吐いた。


(やっぱりこの人は苦手だー…)


 岩瀬は問題集に眼を落としたまま、やはり淡々と、且つ分かりにくい説明をする。

 正直全然分からないけれど、聞き返すのも面倒くさいので、ただ

「はい…はい…」

と答えておく。


 一通り説明したらしいところで岩瀬が初めて顔を上げ、

「分かりましたか?」

と私に訊いた。

「あ、はい…」

と答える。


 全然分からないけれど…


 とりあえずこれで岩瀬からは離れられるけれど、ここにもう用はないことになる。


(先生と話したかったけど、無理だなぁ…)


 私は岩瀬に

「ありがとうございました」

と頭を下げ、ドアの方を向きかけた。


 すると岩瀬が

「では私は職員室に戻りますので、貴女、一緒に行きましょう」

と席を立つ。


(うゎ、途中まで岩瀬と一緒…)

 今日はついてない。
< 41 / 316 >

この作品をシェア

pagetop