星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

「あっ!先生、本の件は…」

「あぁ。別にいいよ、ただの助け舟だから」

「え?」

「岩瀬先生と一緒は南条キツいだろ?」


 あ、バレてる…


 てへへ、と笑う私に先生が再び微笑んだ。


 先生はやっぱり優しい。

 私のことなんかもよく見ててくれて、気付いてくれて。


 でも。


 私は先生のデスクにちらりと眼をやった。
 そんな先生のデスクは膨大な問題集や構文集、辞書、それに画面にぎっしり字の詰め込まれたおそらくプリントを作っているとおぼしきノートパソコン、そんなもので埋め尽くされている。

 忙しいなか、邪魔しに来ちゃったかな…
 なんて、なんだか申し訳なくなる。


「先生、忙しそう」

「あぁ、今ちょっとな。夕方までには片付けたいと思ってんだけど…」

「あ、じゃあ…」


 夕方ならいいのかな…?

 私、どうしても先生と一緒にいたい…


 また夕方来てもいいですか?と口を開きかけた時、


「南条、夕方もっかい来てもらえる?」


「あ…」


 先生は私の顔を窺うように少し顔を傾けてこちらに視線を投げる。

 胸がトクトクと波打つ。


「はいっ!」


(先生とおんなじこと考えちゃった!)


 それだけで幸せだと思える私は、今本当に幸せなんだと思う。

        *   *   *
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