星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 翌日の放課後。


 揺花に先に帰ってもらい、私は図書室で自習していた。

 自習と言ってもただの時間潰し。

 5時を回って生徒が疎らになると私は静かに図書室を出る。


 人目を避けるように向かう先は


 英語準備室。


 一度そのドアの前を通り抜け、直ぐの非常階段からこっそり様子を窺う。
 電気は点いているけれども話し声などはしない。

 中にいる人は多分一人。


 だとするときっと…


(先生だ…)


「はぁー…」


 深い深呼吸ひとつしてドアをノックする。


コンコン…


「失礼します」


 引き戸を開けるとそこには


 はたして先生がいた。



「南条…!」


 パソコンの画面から顔を上げた先生と眼が合うと、先生は心底驚いた顔をした。


「何しに来た…?」

「先生に逢いに来たの」


 私は何事もなかったように笑って見せる。


「帰りなさい、岩瀬先生に見つかったらどうするんだ」

「私は別に構わないよ」

「……」


 先生は私から眼を逸らす。そして少しの間の後、溜め息混じりに言った。


「…俺は困るよ」


 分かってるよ、困らせてるって。

 でも…
< 55 / 316 >

この作品をシェア

pagetop