星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
「先生に、進路のこと聞いてもらいに来たの」
「それは村田先生の仕事だろ」
(仕事…)
先生はやっぱり、私が生徒だから親身になってくれただけなのかな?
気持ちが昂って泣き出した私を教師だから抱きしめてくれただけなのかな?
仕事だから優しくしてくれただけなのかな?
仕事だから、他の生徒と同じように…
私は…
私は先生じゃなきゃダメなのに。
(分かってるよ)
仕事だから、学校から『南条の進路指導に手を出すな』と命令されれば、先生はその通りにしなければならないことも…
仕事だから…
「先生」
「……」
先生は呼び掛けても眼を逸らしたまま。
「先生は、私に
『南条の夢を一緒に探す』
って言ってくれたでしょう?
あれは、『仕事だから』言った言葉なの?」
無言の先生の眉間が少し寄ったのが分かった。
ねぇ先生…
違うって言って。
『私』だったからだ、って言って…
重い沈黙の後、先生がおもむろに口を開く。
こちらを見ることもなく…
「…そうだな」
「!!」
教師と生徒でいい。
ただ私が、私だけが一方的に先生を好きなだけでいい。
それだけでいい。
でも…
先生に逢いたい、傍にいたい。
そして、ようやく暗い暗い闇の中にたったひとつ、一条の星の光が見えた私の手を取って欲しい。
私が先生の『仕事』でなくなってしまったら
ただそれだけ、それさえも許されないのかな…?
* * *