星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 それから、私は初原先生のことが気になるようになった。当然と言えば当然の流れで。


 でも、それは決して『恋』と呼ぶようなものではなかったと思う。


 校内で見掛ければなんとなく様子を窺ってしまうとか、逆に逢わない時には

「先生、どうしてるかな?」

とふと思ってみたりするとか、そんな風だっただけだから。

 確かに、気になっているせいか私は先生が遠くにいてもいつも直ぐに見つけてしまうのだけども。
 でもどうせ見つけたところで先生は中学の担当で私とは接点がないので、私が一方的に先生の存在を見ているだけでそれ以上もそれ以下もないし。


 そして先生はやはりその可愛い風貌からか女生徒たちに囲まれていることが多くて、

「先生可愛いねー!」

「だから可愛い言うな!」

なんていうやり取りをしょっちゅう見せつけられた。


 先生を囲む女生徒たちを横目に見ながら、

「私はあんな馴れ馴れしい接し方は絶対にしたくない」

と思うようにしていた。


 それは別に、羨望とかではない。


 ないはず。


 ない、と思う…



 ある時、

「ごめん、視聴覚室ってどっちだっけ?」

と、先生が生徒に尋ねているのを見た。

 確かに視聴覚室は別の校舎の端にあって分かりにくいけど…

 校内で迷うとか、可愛い系キャラもここまで来ると心配になる。


 視聴覚室の場所を聞くと先生はあの笑顔で

「ありがとう!」

と言って立ち去った。


 女生徒に向けられた輝く笑顔にちくりと胸が痛む気がしたのは、気のせい…


 その後尋ねられた生徒たちが

「やだ!やっぱ可愛いー!」

とかきゃぴきゃぴやっていた。


 なんとなく胸がざわつくのも、多分…


(気のせい…)


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