星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 家に着くと私は夏休みの図書館の時同様再びクローゼットの前で悩みに悩み、結局黒地にボタニカルな小花柄が大人可愛いワンピースとペールピンクのカーディガンを選んだ。

 お風呂に入ったり、食事を摂ったりするけど、それでも先生が来る4時までが果てしなく長く感じる。


 ようやく時計の針が4時を指し、長針が動かぬうちにインターホンが鳴った。

 私は弾かれたように玄関に駆け付ける。


「先生!」

「おぅ。休みに悪いな」


 ダークグレイのスーツに黒地のドットのネクタイでぱりっとした姿の先生が爽やかに微笑む。


「うぅん。私こそごめんなさい…」

「それは俺に言うことじゃない」


 先生の視線が私の後ろに行く。
 振り返ると母が出てきていた。
 簡単に挨拶をして、母が先生をリビングに案内する。


 リビングには父がいて、先生に挨拶をしてそれから三人掛けソファを勧めると昨晩の私の非礼を詫びた。
 私は父と一緒に頭を下げ、リビングセットの脇に置いたスツールに腰掛ける。


「舞奈さんはご自身の将来について良く考えておられます。

 ただやはりまだ子供ですので、考えの甘いところもありますし、あるいはまた思いをお父様お母様に伝えきれない部分もあると思います。
 今日は、差し出がましいかとも思ったのですが、そこのところを私が繋がせて頂ければと思って参りました」

 早速ですが、と前置きして先生が話し始める。


『子供』と先生に言われたことに不満を感じなかったわけじゃないけど、実際こうして迷惑をかけてしまったから仕方ない。
 複雑な気持ちで話を聞いていた。
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