星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
(先生…!)
ドアから半身を出して室内を見ていた先生が私に気付き、爽やかに右手を挙げる。
(なんでここに…?)
私はおそるおそる教室の前に出る。
私をちらちら見たり、ひそひそ何かを言うクラスメイト達も怖くないわけじゃない。
でもそれ以上に私の中で何か変わってしまった先生に逢うのが怖かった。
教卓の前まで出ると、そこにいた私を呼んだクラスメイトが
「初原先生が呼んでる」
とドアを親指でおざなりに指す。
「…ありがと」
呟くように礼を言って、のろのろと先生に向かう。
教室中の視線が先生と私に向けられていた。
その視線を避けるように廊下に出て、教室から死角になる壁際に立つ。
先生は手にしていた封筒を私に差し出した。
少し大きいその封筒は外大の大学名や学部名、住所が印刷されたものだった。
「これ、市川から」
先生が言う。
市川─夜璃子さんからの手紙?
「あの後、あの場で書いてた。何書いたかは知らないけど。読んでやって?」
封筒を受け取ると、
「じゃ」
と直ぐに先生が背を向ける。
「あっ、あのっ!」
歩み去ろうとする先生を呼び止める。
「…ありがとうございます」
先生はいつものように甘い笑顔で微笑んで、階段の方へ姿を消した。
次の授業の間、私は読みたいような読みたくないような気持ちの狭間にいた。
気になる…
けど、
怖い…
はっきり先生の彼女だって言われたらどうしよう…
『私は生徒として、妹として傍に居られればいいだけだから』と、しっかりした心持ちで居られるのか自信がない…
でも結局気になる気持ちが優った次の休み時間、私は手紙を手にひとり屋上に上がった。
空は高く、少し風が冷たい10月末の屋上。
封を開けて手紙を取り出す。
それはA4レポート用紙に少し急いで書いた感じの女性の文字でこう書かれていた。