キミになりたい。
「どうした」

「あの、ルーズリーフとか持ってない?ノート間違えちゃって」

「カバンの中」

瀬戸が、目線をひょいと右下に寄せた。

そこにあるカバンの中から取れ、ということみたいだ。

私は瀬戸のカバンを持ち上げて中を漁る。

ルーズリーフよりも先に分厚い本が目に入った。

[ 数Ⅲ ]

どうやら、数Ⅲの参考書らしい。

また、ドクンと胸が鳴る。

今度は多分恐怖だ。

「瀬戸、数Ⅲなんて勉強してるの?」

「あー、暇つぶしに。面白いから」

「へ、へえー」

なんか変な汗が出てくる。

私達はまだ中3だ。

私は、高校受験の勉強でいっぱいいっぱいなのに。

悔しさと恐怖に押しつぶされそうになる。

分かってはいた。

瀬戸が物凄く頭いいって。

でも、焦りが止まらなかった。

私はできるだけその参考書を見ないようにして、ルーズリーフを取り出した。

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