ツンデレな後輩なんて99.9%好きにならないから!
お祭り会場に入ると、たくさんの出店が連なっていて、
遠くの方から神楽の太鼓や笛の音が聞こえてくる。
さらに、人が溢れかえっていて手を繋いだカップルや家族連れ、
幅広い年齢層の人がすし詰め状態で歩いている。
「やっぱり、人多いなぁ。迷子になりそう…」
と、呟くあたしに
「迷子になられたら探すのめんどいんで、ちゃんと掴んでてくださいよ」
「あ、あそこにりんご飴がある!あとで買お!」
念を押す、広瀬の言葉を無視して、
はしゃぐあたしに、広瀬はため息をついていた。
「あそこに射的があるじゃん!やろ!」
前を歩いていた涼香が、嬉しそうに振り返ったかと思うと
雪代くんの手を引っ張り、屋台へ走っていく。
「涼香ってば、浴衣だから動き回らないでって言ったのにー」
と、言いながら広瀬と追いかけた。
射的と書かれた、少し汚れた黄色の屋台には
キャラメル菓子や小さめの人形、プラスチックのおもちゃなどが並んでいた。
「へい、いらっしゃい。1回200円ね。」
と、気の良さそうな頭にタオルを巻いた、薄着のおじさんに言われ
涼香が、
「1回お願いします!」
と、お金を出していた。
1回につき、弾5個という。仕組みだ。
あたしも、お金を出し弾を貰う。
「観月さんできるんですか?」
と、怪訝そうに広瀬に言われ
「余裕!見てなさいよ!」
と、言いながら弾を詰め慎重に引き金を引く。
…。
おかしい…。
なんと、銃口からわずか10センチのところに弾が落下。
商品に全く届いてもない。
自分で自分に下手さに驚く。
「商品じゃなくて、ウケ狙ってたんですか?」
「うるさい!狙ってないし!次は当てる」
あたしは、また弾を詰めると今度は勢いよく引いた。
だけど、商品とは全然違う方向にぶっ飛んでいってしまった。
「観月さん、いいですか。」
広瀬が屈んで、あたしの後ろからあたしの手に重ねるようにして、
銃を持つ。
顔が…。近い…。
「的をちゃんと見て、銃口をしっかり向けて狙うんです。」
そう言いながら、広瀬はさらに、前屈みになる
息のかかりそうな距離…。
広瀬は銃の引き金を持つ、
あたしの右手の人差し指に自分の人差し指を添えて
ぐっと、引き金を引いた。
パコッ
やった!
小さな音がして、キャラメルの箱が奥に倒れる。
「やるじゃん!」
と、首を横に向けて言うと鼻と鼻が当たりそうなほど近くに、
広瀬の端正な顔があり
ビクッと、思わず飛び退く。
「あんた、距離が近いのよ。バカバーカ」
体が熱くなり、顔がなぜか赤くなるのを感じる。
それなのに、広瀬は冷静というか表情を崩さず
「せっかく教えてあげたのに、バカ呼ばわりされるとは思いませんでした」
と、むしろこっちを小バカにしたように言いながら、銃を置いた。