ツンデレな後輩なんて99.9%好きにならないから!
放課後、呼び出された場所へ向かう。校舎裏はグランドとも校門とも面していないので、人気がなく校舎が影になり少し暗かった。
行ってみると、知らない男の子がいた。眼鏡をかけた真面目そうな子。
私を見たとたん、伏し目がちにおどおどしていた。
「手紙をくれたよね?」
あたしが言うと、
「えっと、俺となりのクラスの山田って言います。
ずっと、観月さんのことが好きでした。付き合ってください。」
彼は、緊張しているのか、顔を赤くして頭を下げた。
話した記憶もないのに、なんで好きなんだろう…。
「あの、私のどこが好きなの?」
彼は、少し困った顔をしながら、顔をあげると
世話しなく目線を動かしながら、呟いた。
「えっと…。あの…。顔です…。」
え?かお…。
思わずキョトンとしてしまう。
「観月さん、めちゃくちゃ、かわいい顔をしてるし、小柄で小動物ぽいというか、守ってあげたくなる雰囲気だし。マネージャーとかしてるから、尽くしてくれそうだなって…。」
と、なぜか照れながら一気に捲し立てる。
は?コイツはなに言ってんの?
ぶっちゃけ、化粧で盛ってることを差し引いても、
顔はそこそこかわいい方だとは思う。
目が大きくて色白の童顔だし、スカウトされたこともある。
でも、基本的には、親の組み合わせだ。
かわいく産んでくれた親に感謝はしているし、
でも、自分の努力ではないし、そこを評価されても困ってしまう…。
それに、小柄なのはコンプレックスだし、守ってほしいとも思っていない。あたしは、気は強いし、尽くすより尽くされたいし、どちらかというとワガママだ。
あたしのことを好きになってくれて、嬉しいはずなのに
なんだか、複雑…。
あたしは、よくこういう告白をされる。
もう、慣れたはずなんだけどな…。
あたしの外見しか見てない人に告白されるたびに、
内面を否定されたような気持ちになる。
郁斗も、勝手なイメージ作り上げられると困るって言ってたな…。
「ごめんなさい。あたし、今部活とかで忙しいからムリです。」
「じゃあ、3年だし部活引退したら付き合ってくれる?」
と、思ったより食い気味に詰め寄ってきた。
「そのあとも、受験とかあるし…。
あたしの表面しか見てない人とは付き合えないからごめん。」
しつこいから、あえて突き放すように言うと、
山田くんは、スッと下を向き大声で怒ったように叫びだした。
「なんだよ!なんだよ。
顔がいいから彼女にしたら、俺の株が上がると思って告白したのに、なんで恥かかかされなきゃなんいけねーんだよ。お前のことなんて別に本気じゃなかったし。てか、尻軽女だって噂だから絶対いけると思ったのにクソだわ」
なにコイツ…。さっきと態度が全然違う。まるで別人だ。
「なにその噂!私そんなんじゃないし!」
「は?サッカー部の部長の神宮寺とかエースの広瀬とかイケメンを狙ってるんだろ?クラスでも影宮とよく一緒にいるし。何股もかけるビッチだって噂されてるぜ」
え…。
いやいやいや、あたし彼氏いない歴=年齢なんだけど…。
そんな風に周りに思われてるの?
あたし男子に媚びたりしてないし、もちろん狙ったりなんてしてない。
一生懸命ただ、マネージャーをしてるだけ、
部員ははかわいい弟というか息子みたいな感覚だ。
郁斗とだってほんとにただの幼なじみ。
なのに、なんでこんな風に言われちゃうんだろう…。
悔しい…。
悔しいよ…。
なぜか、目頭が熱くなってくる。
「なに泣きそうな顔してんの?言い当てられちゃって困ってんの?
他の男ともさんざん遊んでんだろ?俺とも遊んでくれるよ!な?」
と、ニヤニヤしながら肩を組んできた…。
息が懸かりそうなほど近づけられた顔に不快感しかない。
そして、左手であたしの頬に撫でてきた。
ヤダ…。マジでキモい…。
思わず目をギュと閉じる。