先生はめんどくさがり。
「江夏がんばれよ」
先生の隣に座っていた伊藤先生も、そう笑って言ってくれた。
「はい!失礼します!」
だから私はもっともっと、強くなる。
強くなって、必ず幸せになるんだ。
先生達に頭を下げて、ここから出ようとした時。
大好きな声が私を止めた。
「恋」
学校なのに呼ばれる下の名前。
不意打ちも、その声も、呼び方も全部好き。
「ん?」
だから私も、余裕ぶってしまう。
本当は心臓はち切れそうだけどね。
「数学。よく頑張ったな」
そして、さらに私を沼へと誘い込む。
もう、好きが溢れて止まらなくなるよ。
「やればできるもん!」
褒められたことが、死ぬほど嬉しいけど、このままいればまた先生に溺れてしまうから。
私はそう言って、数学準備室を出て行った。