先生はめんどくさがり。


私の腕を掴んだ啓太。


それに言い返そうとした私。



そして、最後に聞こえた声。


私の、大好きな優しい声。





「先生…」


「今日だけ俺に譲ってよ」





そう言って、階段を降りてくる先生。





「譲ってって…別に俺のものじゃねーし」


「へぇ。ならお前はこいつの何?」





冷たい目に、冷たい口調。


…先生が猫被ってない。





「…それが本性かよ」


「答えろよ」


「…幼馴染み…だけど」


「幼馴染みねー…便利な言葉だよな。そう言っとけばそばに居られるんだから」





最初に見た、私をめんどくさそうに見る先生。



懐かしい。


あの頃は、ただ先生を追いかけていただけだったから。





「ならあんたは?教師のくせに生徒で遊んで、やってること最低だろ」


「遊びじゃねえよ」

< 170 / 284 >

この作品をシェア

pagetop