先生はめんどくさがり。
「啓太…」
私がそう名前を呼ぶと、体が離れて向き合うような形になる。
親指で頬を伝う涙を拭ってくれたあと、大きな手で両頬を包まれた。
「もう俺ら、幼馴染みには戻れないよ…」
そう言って啓太は、私の瞼にキスをした。
触れるだけの、優しいキス。
「俺のことも、眼中に入れろよ」
きっと、唇にキスをしなかったのは啓太なりの優しさ。
…啓太を好きになれたら、こんな想いしなくて済むのに。
なのにまだ、心で先生に会いたいって思っている私は重症だよね…
その日の帰りも、次の日になっても、啓太はいつもと変わらない。
どうやら意識しているのは、私だけらしい。
授業中とか、ホームルーム中とか、委員会中とか。
何度も目が合うけど、逸らしての繰り返し。
「恋、帰んぞ」