先生はめんどくさがり。


「お前のじゃないとリレー速く走れねーかも」





なんて、相変わらず素直じゃない。


だけど、そんな啓太に少し笑って、私は頭につけていたハチマキを外して差し出した。





「負けたらみんなの前で今言ったことバラすからね」


「お前本当、悪趣味だなー」


「あははっ」





クラスボードを置いて、啓太と交換したハチマキを頭を巻き直す。



綺麗に巻き直せて、顔をあげると見えた人。


…少し遠くだけど、目が合った気がした。



あの日から、白浜先生とは話していない。


学校で先生を見つけると反対方向へ歩くし、数学の時間は顔を伏せている。



…あの日言われた言葉が、頭から離れないから。

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