次期社長と訳あり偽装恋愛
えー、電話番号って!
連絡先を聞かれ、どう返事をすればいいのか頭をフル回転させいい答えを出せたと思ったのに……。
あまりのしつこさにどうしようか考えていたら誰かの手が私の肩に触れた。
そして、能勢さんから守るように私を抱き寄せたのはまさかの人物だった。
「梨音、どうした?」
「あ、立花さん……」
どうしてこんなところに立花さんがいるんだろう。
しかも今、゛梨音〝て呼んだよね?
「梨音ちゃん、この人誰?」
突然の男の出現に能勢さんが怪訝な表情で聞いてくる。
私が答えるよりも先に立花さんが口を開いていた。
「俺は梨音の彼氏だけど、君は?」
私の肩を抱いたまま挑戦的な発言をする。
立花さんを見上げると私の視線に気付いたのかフッと微笑んだ。
「彼氏?」
能勢さんが驚きの声を上げ、私と立花さんを交互に見る。
「やっぱり、君が誰かは別に答えなくてもいいよ。俺には関係ないから」
そう言うと立花さんは見せつけるように、私の耳元へ唇を寄せて囁いた。
「彼氏の俺に内緒で梨音は何をしているんだ?」
「そ、それは……」
心臓がドキッと跳ね、顔が真っ赤に染まる。
「そういうことだから、連絡先も教えないし、彼女の送りはいらない。行こう、梨音」
立花さんはキッパリと言い放つと、私の手を握り居酒屋を出た。