次期社長と訳あり偽装恋愛
「私の友達のこと、悪く言うなんて許せない。それを聞いた瞬間に気持ちが冷めた」
そう言った玲奈が無理しているように見え、何だか申し訳なくなる。
「だから、中村は男を見る目がないんだよ」
急に会話に入り込んでくる人がいた。
「み、宮沢!あんた、いつから話を聞いてたの?」
私の彼氏の話を聞かれてないかなと思い、焦りながら聞いた。
「私なんて惨敗よって中村が言ったところぐらい」
なんだ、そこからか。
私はホッと胸を撫で下ろす。
「勝手に話を聞かないでよ」
「別に聞きたくて聞いたんじゃねぇよ。中村の声がデカイから自然と聞こえてきたんだよ」
玲奈と宮沢が言い合いをしている。
この二人、会えばいつもこんな感じだ。
「中村、合コンで何度も失敗してるのにホント懲りないよな。確か、前回はマザコン男に引っかかったって言ってただろ」
そう言いながら、空いていた玲奈の隣の席へ座る。
「うるさいな。宮沢には関係ないでしょ、大きなお世話。梨音、悪いけど先に行くね」
玲奈はガタッと椅子を引き立ち上がる。
宮沢に対してフンと鼻を鳴らしたあと舌を出し、トレイを持って返却口へ向かった。
宮沢は玲奈の後ろ姿を見てため息をつく。
何なの、その反応は。
私は前から気になっていたことを口にした。