次期社長と訳あり偽装恋愛
「出してないよ。宮沢の声の方が大きいでしょ。で、いつから?」
「お前、面白がってるだろ」
「失礼ね。そんなこと……少しはあるけど」
「って、あるのかよ!」
ガクッとズッコケる宮沢を見て笑ってしまう。
「相変わらず仲がいいな。隣、いい?」
「あっ、どうぞ」
定食がのったトレイを手にした高柳課長が宮沢の隣に座った。
「宮沢と河野さんのやり取りを見ていると、コントみたいで面白いな。なぁ、翔真」
高柳課長はフッと笑い、同意を求めるように私の横に視線を移した。
「そうだな。ここ、邪魔するね」
私の隣の椅子を引いて座るのは、まさかの立花さんだった。
土曜日、立花さんの前から逃げるように帰ってしまったので気まずくて、隣を見ることが出来ない。
SNSもそっけなく返信してしまった自覚はあるし。
「翔真と昼飯を食べるの久々だよな」
「そうだな」
「ここではもっぱら手作り弁当食べてるんだろ。あれ、誰が作ってるんだ?」
「さぁ、誰だろうな。高柳の想像に任せるよ」
「何だよ、それ」
私は二人が話している間、必死に箸を動かしていた。
内容が内容なだけに居心地が悪く、早くこの場から離れたかった。
最後の一口を食べ、やっと解放されると思っていたら、高柳課長の言葉に動きを止めた。