次期社長と訳あり偽装恋愛
まさかの人物に言葉を失った。
もしかしたら同姓同名かも知れない。
きっとそうだ、と自分に言い聞かせていたら舞が申し訳なさそうな表情で口を開く。
「梨音、ごめんね」
「どうして舞が謝るの?」
「だって……」
そう言って舞は口ごもる。
何で舞が謝罪の言葉を口にするのか、私には理解できない。
もしかして、槙田昴が同姓同名の別人ではないってことなんじゃ……。
ドクリと心臓が嫌な音を立てる。
舞は私と昴くんのことを知っているんだろうか。
動揺しているのを悟られないよう、平静を装う。
「舞、もしかして私と昴くんのこと……知ってるの?」
私の問いかけに舞は唇をキュッと噛み、静かに頷いた。
やっぱりそうなんだ。
槙田昴……懐かしい名前にいろんなことが蘇ってくる。
私は、二十歳の誕生日に起こった出来事を思い出していた。