次期社長と訳あり偽装恋愛
お兄ちゃんが高校の時、友達数人が何度か家に遊びに来ていた。
その中の一人が昴くんだった。
いつもからかわれていて、どちらかと言えば嫌いだった。
だけど、大学受験の時に勉強を教えてもらったのをきっかけに好きになったんだ。
本当ならお兄ちゃんに勉強を教えてもらおうと思ったんだけど、あっさり断られた。
『仕事を覚えるのが大事だから』って。
お兄ちゃんは、おじいちゃんの会社に就職した。
昔から建築関係の仕事に興味を持っていて、必死に勉強していたのを知っている。
お兄ちゃんの夢はおじいちゃんの会社を継ぐことだから。
それでも、可愛い妹に勉強を教えてくれてもいいじゃない。
『お願い!』と縋り付いていたら、それを見ていた昴くんが『家庭教師のバイトをしたことがあるし、俺が教えようか?』と言ってくれた。
わらをもすがる思いだったから、嫌いな昴くんでもいいかとお願いしたんだ。
今考えると、どれだけ上から目線だったんだって話だ。
週に二日、家まで来て勉強を教えてくれた。
昴くんは仕事で忙しいのに、わざわざ受験対策ノートを作ってくれた。
平均点ギリギリの数学も根気強く教えてくれて、かなりの点数が取れるようになった。
嬉しくて昴くんにテスト用紙を見せると『よく頑張ったな』と笑って頭を撫でてくれた。
その時の昴くんの笑顔にときめいて、気が付いたら好きになっていた。