次期社長と訳あり偽装恋愛

今考えると酸っぱい思い出だな。
しかも、お兄ちゃんが鬼過ぎて身震いしてしまう。

それより、舞のことが気になった。
私と昴くんのことを知っていて謝罪するということは……。

「ねぇ、もしかして私がまだ昴くんのことが好きとか思ってる?」

舞は視線をさ迷わせる。
やっぱり思った通りだ。
これは誤解を解いておかないといけない。

「あのね、私が告白したのは五年も前の話だよ。さすがにもう吹っ切れてるって」

「ホントに?」

「うん。ホントだって!」

笑顔で言えば、舞はホッとした表情を浮かべた。

それから舞は簡単に付き合うまでと私と昴くんの関係を知った経緯を話してくれた。

二週間前、二人で食事に行った時に昴くんから告白されて付き合うようになった。
話の流れで自分たちの友達の話になり、舞が私の話をした時に名前を聞いて昴くんはかなり驚いたらしい。
まさかと思って舞にフルネームを聞いたら゛河野梨音〝と知り、昴くんは包み隠さずに話してくれた、と。

過去にあった出来事を聞いてしまい、舞はずっと悩んでいたんだろう。
って、そりゃそうか。
親友を振った人が自分の彼氏になるなんて、こんな偶然は滅多にない。

「舞、話してくれてありがとね。さっきも言ったけど私は昴くんのことはなんとも思ってないし、気にもしてないから。それより好きな人と付き合えてよかったね」

私は舞を心から祝福した。
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