次期社長と訳あり偽装恋愛
「梨音、ホントにごめんね」
「だーかーらー、どうして舞が謝るの?舞は何も悪いことなんてしてないでしょ。今度謝ったらデコピンするよ」
舞の為にも昴くんに会ってちゃんと話をしようと思っていたら、ドアベルがカランと鳴った。
「こんばんは」
振り返ると、少し息を乱した昴くんがバーの中に入ってきた。
五年ぶり、か。
大人の魅力が増した気がする。
「槙田くん、いらっしゃい」
「朔斗さん、連絡ありがとうございました」
「どういたしまして。で、今日は何を飲む?」
「ウーロン茶で」
「了解」
昴くんは真っ直ぐに歩いてきて、私の隣りの席に座った。
「梨音、久しぶり」
「あ、うん。久しぶり」
あまりにも久々過ぎてぎこちなくなってしまう。
私の左隣に座っている舞が心配そうな視線を向けてきているのはなんとなく分かる。
よし、ここは私が口火を切ろう。
「昴くん、舞と付き合っているんだってね」
「あ……、うん。梨音、あの時は本当にごめん」
「どうして昴くんが謝るの?私はハッキリ振ってくれてよかったと思ってるから」
「いや、俺はあの時、梨音に嘘をついていたんだ」
「嘘?」
いったい何のことか分からず首を傾げる。
「響也が俺に彼女がいるって言っただろ。あれは嘘なんだ」
「えっ?」
予想もしてなかった答えに絶句した。