次期社長と訳あり偽装恋愛
昴くんに彼女がいたのは嘘だったの?
「俺は梨音のことは昔から知っているし、慕ってくれるのは嬉しかった。だけど、梨音の気持ちに答えることは出来なかった。ずっと妹みたいに思っていたから」
昴くんはウーロン茶をひと口飲む。
「月日が経てば俺への気持ちも薄らぐかなと思っていたけど、梨音は二年経ってもまだ俺のことを想い続けてくれていて……。響也に言われたんだ。『お前の答えは曖昧過ぎて梨音に期待を持たせている』と。全くそんなつもりはなかったんだけど、結果的に響也の言う通りだった。それであの時、響也は俺に彼女がいると言って、俺もその嘘に乗っかったんだ」
申し訳なさそうに頭を下げる。
「梨音ごめんな。あの日から梨音と会うことはなくなって、俺はずっと後悔していた。ショウにも嘘をつくんじゃなくて、本当の事を話すべきじゃなかったのかと諭された。真剣な気持ちには真剣に答えてあげないと相手にも失礼だと。確かにその通りだった。最後に見たのが梨音の必死に涙を堪えている顔で……」
昴くんは言葉に詰まり、唇を噛んでいた。
私も昴くんの言葉を聞いて泣きそうになった。
でも、本当の気持ちが聞けてよかった。
お兄ちゃんもあんなキツイ言い方をしたのは、私の為だったのかなと今になって思う。
鬼なのは変わらないけど。
反対側の舞も俯いたままで、膝に置いた手はギュッと拳を握っていた。