次期社長と訳あり偽装恋愛

「河野さんはマキを俺が気になっている子だと勘違いし、俺の恋の邪魔はしてはいけないとか考えて偽装恋愛をやめることにした」

言い当てられ、私は目を泳がすことしか出来なかった。

「ホント、河野さんは分かりやすいね」

ふっと小さく笑う。
マキは立花さんの気になっている人じゃなかったんだ。
ということは、他にいるってことだ。

「じゃあ、俺のことも話そうか。聞いてくれる?」

確認するように聞いてきて、私は静かに頷いた。

「俺とマキ、河野さんの兄の響也は高校時代からの友人だ」

「えぇー?あっ、すみません」

まさかのお兄ちゃんの名前も出てきて大きな声を出してしまった。
それで、あれ?と思う。

そういえば、初めて立花さんと食事をした時に『私の兄と同い年ですね』と言った時に『そうだね』と答えていて違和感を覚えていた。
お兄ちゃんのことを知っていたから、あんな返答だったのか。

もしかして、私のことはお兄ちゃんから聞いていたりしたんだろうか。
そんな態度は微塵も感じられなかったけど。

「ちなみに、河野さんがマキにフラれたことも知っている」

「えっ、どうして……」

「俺もその場にいたから」

サラッと言われ、頭が真っ白になった。
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