次期社長と訳あり偽装恋愛
「そこへ、勢いよく河野さんが入ってきたんだ。幼かった君が綺麗な女性へと変化していたのに驚いた。二十歳になったと嬉しそうに笑っていたのに、マキに付き合っている人がいると知った瞬間、必死に涙をこらえてマキに別れを告げる姿が今も忘れられない。純粋にマキだけを想い続けていたんだというのが手に取るように分かった。その時から、俺は君のことが気になって仕方がなかった」
そう言って真っ直ぐに私を見つめてきた。
私のことが気になっていたってどういうことなんだろう。
額面通りに受けとると、完全に勘違いしてしまう。
聞くのが怖い。
だけど、ここまで来たら思っていることを全て聞いてスッキリさせたくなった。
「それはどういうことですか?立花さんには好きな人がいます、よね?そんな風に言われると勘違いしてしまいます」
「勘違いじゃないよ。俺の好きな人は河野さん、君だ」
「嘘……」
本音がポロリとこぼれ落ちる。
立花さんが私のことを好き?
「嘘じゃないよ。河野さんが今にも泣きそうになっているのを見て俺ならそんな顔はさせないのにと思ったんだ。その時はどうしてそんな風に思ったのか分からなかった。でも、海外に行ってから、ふとした時に河野さんのことが気になっていた。もう泣いていないだろうか、と」
突然の告白に何も言えずにいたら、立花さんは言葉を続ける。