次期社長と訳あり偽装恋愛

「そして月日が経ち、こっちに戻ってきて驚いたよ。河野さんが同じ会社で働いているんだから。偶然にも同じプロジェクトメンバーに選ばれて素直に嬉しかった」

フッと頬を緩める。

「一緒に仕事をするようになって、君と宮沢くんの距離が近いことが気になった。同期だから仲がいいのか、とかモヤモヤして。この感情は嫉妬だと気付いた時、俺は河野さんのことが好きなんだと自覚した。というか、バーで会った時から俺は河野さんに惹かれていたんだと思う」

真っ直ぐな言葉が私の心を射抜く。
もう、心臓が張り裂けそうだ。

自然と涙が浮かび、立花さんが柔らかな笑みを浮かべながら指で拭ってくれる。

「打ち合わせとかで事務的な会話は何度かしたことはあったけど、どうにかして距離を詰めていきたいなと考えていたんだ。そしたら、あんな場面で河野さんと遭遇するとは思わなかったよ。でも、そのお陰で君と話せる口実が出来た」

きっと、金城さんが立花さんに告白している場に遭遇したことを言っているんだろう。
確かにあの出来事がないと立花さんと一緒に食事に行くことはなかったと思う。

「河野さんと話をして、マキとのことがトラウマになっていることを知った。どうにかしてそれを払拭してあげたいと思ってあんな提案をしたんだ。まぁ、河野さんにとっては迷惑な提案だっただろうけど」

そう言って苦笑いする。
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