次期社長と訳あり偽装恋愛
提案というのは恋のリハビリのことだよね。
さすがに言われた時は戸惑った。
でも、自分で考えて受け入れたんだ。
「そんなことないです。私は立花さんの優しさに触れて心が満たされていました。偽装じゃなくて本当の彼氏だったらよかったのに……と思うようになっていました」
私の言葉に立花さんは驚いて目を見開いた。
昴くんにフラれてから、恋をすることに臆病になっていた。
でも、私は立花さんのお陰で前を向けたし、新たに好きな人も出来た。
久しぶりに芽生えた恋心。
気持ちを伝えずに後悔したくないから、私は勇気を振り絞る。
「あの日、立花さんの口から゛マキ〝という名前を聞いて、私は勘違いしました。きっと立花さんの気になっている人なんだと。それで、私は邪魔したらいけないと思って偽装恋愛の解消を言い出しました。でも本心はすごく後悔しました」
「河野さん、それって……」
好きな人の幸せを考えて身を引いた、なんていうのは建前だ。
「私から解消を切り出したくせに、何をしていても立花さんのことを考えてしまう自分に嫌気がさしました。こんなことなら、゛マキ〝という存在に怯えず、気持ちを伝えればよかったと」
私は小さく息をはくと、真っ直ぐに立花さんを見つめ言葉を紡いだ。
「私は、立花さんのことが好きです」