次期社長と訳あり偽装恋愛
気持ちを告げた途端、立花さんは微動だにせずに私をじっと見つめている。
えっと、私は今、告白をしたよね。
何の反応もしない立花さんに不安を覚える。
「あの……」
私が声をかけると、立花さんがハッとし、みるみるうちに顔が赤く染まっていった。
「いや、ごめん。あ、ごめんじゃなくて。ちょっと待って。これはヤバイな」
ごめん?
ヤバい?
これは私の告白に対する返事なんだろうか。
グルグルとマイナス思考が私を支配していく。
「ホント、可愛すぎて参るよ」
私の身体は立花さんの腕の中にいた。
一気に鼓動が跳ね上がる。
これって……。
「夢じゃないよな」
私が考えていたことを立花さんが口にする。
抱きしめている腕を緩めると、顔を近づけ額と額がぶつかる。
絡まり合う視線に心臓は高鳴り、顔が熱を帯びる。
全く逸らされない立花さんの瞳に、視線の行き場をどうしようかと思っていたら、私の唇に柔らかな感触があった。
一瞬、頭の中が真っ白になり、自分の身に何が起きたのか分からなかった。
でも、すぐにキスされているんだと気づく。
目を見開いたまま固まっていたら、触れていた唇が離れる。
「おーい、大丈夫?」
顔を離した立花さんがクスクスと笑いながら私の頬を人差し指でつついた。