次期社長と訳あり偽装恋愛

デートの定番と言えば、遊園地、水族館、ショッピング……。
私が答えないと、いつまで経っても移動することが出来ない。
いろいろと考えた末、口を開いた。

「えっと、映画……とかですかね?」

「映画ね、了解」

立花さんは車を発進させた。
チラリと運転している立花さんの横顔を盗み見る。
立花さんと付き合ってるなんて、まだ信じられない。

でも、昨日と明らかに違うことがある。
それは、立花さんが私を名前で呼んでくれるようになった。
立花さんの口から゛梨音〝と呼ばれることに慣れてなくて、誰か違う人の名前みたいだ。

「何か見たい映画はある?」

「えっ……」

思い付きで言ってしまい、見たい映画を聞かれても何を上映してるのか分からない。

「洋画と邦画、どっちがいい?そういえば、洋画はホラーが今話題になってるよね。CMでよく見るけど。邦画はラブコメを上映してた気がするなぁ」

「邦画で!」

話を聞いて間髪入れずに答えた。

「もしかして、ホラーは苦手?」

「はい。立花さんは大丈夫ですか?」

「好んでは見ないけどね。じゃあ、ホラーじゃないやつを見ようか」

立花さんはいつも私の意見を優先してくれる紳士的な人だ。
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