次期社長と訳あり偽装恋愛
「面白かったですね」
「そうだな。ラブコメだから笑える映画と思ってたけど、意外に感動する場面もあったし」
「ラストのプロポーズには泣いちゃいました」
映画を見終わり、感想を話しながら二人で並んで歩く。
大型商業施設の中にある映画館を出て、少し離れた場所に文房具売り場がある。
自然と私たちの足はそこに向かっていた。
「これはもう、職業病だな」
「そうですね。どんな文房具が置いてあるのか気になっちゃいますよね」
立花さんの言葉に素直に頷く。
やっぱり立花さんも仕事柄、文房具の店をチェックしてしまうと言っていた。
私も自社の商品が置いてあると嬉しくなるし、他社の商品でもどんなデザインの文房具があるのか気になり、つい手に取ってしまう。
「あ、もふりんだ」
もふりんの描かれているシャーペンを手に取った。
来月、私が携わったちーすけの文房具が店頭に並ぶことになっている。
考えただけで胸が踊る。
「そろそろ晩ご飯、食べに行く?」
「そうですね」
「店はもう予約してあるから」
行こうか、と私の手を取ってギュッと握ってきた。
今まで異性と手を繋いだ経験がないので握り返すべきなのか迷い、チラリと隣を見上げると、立花さんは優しい微笑みを向けて指を絡めてきた。
私はドキドキしながら駐車場に向かった。