次期社長と訳あり偽装恋愛
連れてきてくれたのは創作イタリアンバル『ミレナル』というお店。
立花さんがここのオーナーと知り合いらしく、昨日の今日でも予約が取れたのだという。
店内はアンティーク調の内装で、照明や小物にもこだわっている。
テーブル席や半個室などあり、私たちが通されたのは完全な個室だ。
私はメニューを見て、どれも美味しそうで選べなかったので立花さんにお任せした。
手慣れたようにコース料理を注文してくれた。
料理を待っている間、立花さんは思い出したように口を開いた。
「そうそう、あのあと響也に連絡したんだ」
「えっ」
お兄ちゃんに連絡?
いったい何を言ったんだろう……。
「梨音ちゃんと正式に付き合うことになったって報告した。以前、響也に君が好きだと伝えた時、本気なのかと詰め寄られたんだ。アイツもなんだかんだ言いながら梨音ちゃんのことが心配だったんだろうな。俺は本気だし、誰よりも君のことを大切にするし甘やかしたいんだ」
さっきから立花さんの口から飛び出してくる言葉の数々に私はドキドキしっぱなしだ。
「響也に『梨音のことを頼む』って言われたよ。まぁ、頼まれなくてもそのつもりだけど」
そう言って、思わず見惚れてしまうような笑顔を向けてくる。
心臓がいくつあっても足りないぐらいだ。