次期社長と訳あり偽装恋愛

早速電気をつけ、準備を始める。
机に一部ずつ資料を並べていると、会議室のドアが開いた。

「お疲れさま」

「あっ、お疲れさまです」

聞こえてきた声に振り返って返事をすると、高柳課長と立花さんが会議室に入ってきた。
立花さんの姿を見ただけで私の胸は跳ね上がる。
それを悟られないように視線を逸らそうと思った時、立花さんとバッチリ目が合い、優しい笑顔を向けてきた。
あぁ、もうそれだけでノックアウトだ。
顔が熱い。

「あれ?河野さん、顔が赤いけど大丈夫?」

「だ、大丈夫です。この部屋に来る前に階段を駆け上がったので汗をかいたのかも知れません」

高柳課長に言われ、咄嗟に誤魔化した。
だけど、いい返しが見つからずに出た言葉が汗をかいたとか最悪だ。
自分で言っておいて恥ずかし過ぎる。

立花さんはクスッと笑っている。

「翔真、今日もまた弁当だったらしいな」

「あぁ」

「お前に手作り弁当を持たせてくれる彼女にはいつ会わせてくれるんだ?」

準備を再開していたら、高柳課長たちの雑談が耳に入ってきた。
その内容が、まさかのお弁当とか!
心臓に悪すぎる。

「何で高柳に会わせないといけないんだよ。もったいない」

「は?もったいないって何だよ」

立花さんの答えに高柳課長が不満顔で言う。
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