次期社長と訳あり偽装恋愛
「梨音ちゃん、さっきからビールをよく飲んでるけどお酒は飲める方?」
目の前に座っていた志保さんが聞いてくる。
「かなりって程じゃないですけど、お酒は好きです」
「そうなのね!見た目は『ビールとか飲めません』とか言いそうだけど」
「私ってそんな風に見えますか?」
「うん。カクテルとか甘いお酒限定みないな感じがする」
ちょっと待って。
私と同じような顔でそんな感じの人物をよく知っている。
「あー、私の母親がそうです。ビールとか一切飲めなくて、カクテル専門ですね。しかも、三杯ぐらいで酔っぱらっちゃうんです」
「えーなにそれ。すごく可愛い。顔は似てるの?」
「母の若い頃にそっくりみたいです」
「へぇ。私は完全に父親似なの。眉毛もすっごい太くて昔からコンプレックスだったの。メイクするようになって綺麗に整えたけどね」
志保さんの眉毛は綺麗なアーチ型を描いている。
ハンサムウーマンといった感じだ。
「おい、今日は飲み過ぎるなよ」
隣に座っていた宮沢が小声で話しかけてくる。
「分かってるって」
「ホントかよ。中村からお前の酒癖の悪さを聞いてる俺的にはかなり心配なんだけど」
前に玲奈と一緒に飲んだ時、二回ぐらい記憶をなくしてる。
それを聞いたんだろう。
まぁ、あの時は玲奈と二人ということもあり、気が緩んでいたのもある。