次期社長と訳あり偽装恋愛

藤崎さんはかなりお酒を飲んでいるみたいで、顔も赤く明らかに酔っぱらっていた。

「前々から思ってたんだけど、二人は付き合っているよね?」

「藤崎、酔ってるでしょ?梨音ちゃんたちがビックリしてるじゃない。絡むのやめなよ」

「いいじゃない。こんな機会でしか聞けないんだから。ねぇ、どうなの?」

不躾な質問に顔を歪めた志保さんが間に入ってくれたけど、藤崎さんはお構いなしだ。
酔ってる人の相手はめんどくさい。
どうせ、何を言っても駄目だろうけど。

同期で話しているだけで付き合っているとか勘違いされるなんてあり得ない。

「付き合ってません。宮沢は仲のいい同期の一人です」

「ふぅん」

私がハッキリと否定したら面白くなさそうな顔になり、ため息をつくと席を立った。
どこに行くんだろうと見ていたら、なぜか高柳課長や立花さんの元へ向かっていた。

「高柳課長、企画の宮沢くんと河野さんて本当に付き合ってないんですかぁ?」

思わず私は宮沢と顔を見合わせた。
この人はいったい、何がしたいんだろう。

「そんな話は聞いたことがないから付き合ってないと思うよ」

「えー、でもさっき顔を近付けてコソコソ話したり、腕を触ったりしていい雰囲気だったんですよぉ」

チラチラとこちらを見てくる。
ホントに勘弁して欲しい。
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