次期社長と訳あり偽装恋愛
そんなことを確認するために、わざわざ高柳課長のところに行くなんて嫌な感じだ。
でも、私はこの話を聞いた立花さんに誤解されないかハラハラしていた。
「同期なんだから仲良く話すことはあるだろ。藤崎、余計なことを言うもんじゃない」
立花さんが藤崎さんに窘めるように口を開いた。
私はその言葉を聞いて安堵した。
「あの人、かなりめんどくさい人だな。そんなことわざわざ上司に聞きに行くか?」
宮沢が舌打ちする。
その気持ち、痛いほど分かる!
私だってさっきからイライラしているし。
「二人とも、なんかごめんね。あれは酔っ払いの戯言として聞き流しといてね」
「はい、そうします」
志保さんに言われ、私たちはスルースキルを発動し目の前の料理に手を付けた。
宮沢はフラリと立ち上がると、「トイレ」と言って部屋を出た。
私はつくねを頬張っていたら、隣に誰かが座る気配がした。
てっきり、宮沢がトイレから戻ってきたと思っていたんだけど。
「河野さん、さっきはうちの部下が変なことを言ってすまなかったね」
まさかの立花さんで心臓が飛び出るかと思った。
なぜか今まで宮沢がいた場所に立花さんが座った。