次期社長と訳あり偽装恋愛
「いえ、大丈夫です。気にしてませんから」
どうにか平静を装いながら答える。
公の席でこんな至近距離に立花さんが座ってるなんてドキドキしない訳がない。
「藤崎は仕事は出来るんだが、噂話に興味があるみたいで、そこをどうにかしてもらえたらいいんだけど」
立花さんが申し訳なさそうな表情になる。
別に部下だからって立花さんが謝ることはないのに。
少しモヤっとする。
それに、嘘や冗談でも宮沢と付き合っているという話が出るのは不本意だ。
ましてや、それを立花さんに聞かれたのが本当に嫌だ。
宮沢だってやっと玲奈に告白してこれからって時に、変な噂が広まったら嫌だと思うし。
「立花課長も大変ですね。まぁ、あの子の噂好きは直りませんよ」
志保さんが苦笑いしながら言う。
「根も葉もない噂話を広められたら困る人間もいるってことを学習して欲しいですけど」
トイレから戻ってきた宮沢がイライラした様子でビールを飲み干した。
「確かにそうだよね。二人に不愉快な思いをさせてすまない。藤崎には日を改めて注意しておくよ」
「あ、すみません。立花課長にそこまでしてもらわなくても大丈夫です」
宮沢は焦りながら謝罪していた。