次期社長と訳あり偽装恋愛

お開きの時間になり、居酒屋を出ると藤崎さんが駄々を捏ねていた。

「私も二次会に行くー」

「行かない。藤崎はもう帰る!」

「えー、まだ飲み足りない」

「もう十分だから。立花課長、藤崎を連れて帰ります」

「ありがとう。悪いけど頼むね」

志保さんは止めてあったタクシーに藤崎さんを押し込んだ。
一連の動きがすごくスムーズで、慣れているのかな?と感心するぐらいだった。

「梨音ちゃんは二次会行く?」

「すみません。ちょっと眠くなったのでここで失礼します」

「じゃあ、送ってあげるよ」

「いえ、大丈夫です。野中さんが二次会に行かれなかったらみんな困りますよ」

野中さんに聞かれ、私は断りを入れた。

「野中さん、俺がタクシーで送るんで大丈夫ですよ。あっ、みんな野中さんを呼んでますよ」

宮沢が二次会に行くメンバーを指さすと、こっちに向かって手を振っている。

「悪いな。じゃあ、頼んだよ」

野中さんは足早にみんなの元へ向かった。

「別に送ってくれなくても一人で帰れるから大丈夫だよ」

「中村にお前の面倒をみてやれって頼まれてるからな。こっちも仕方なくだよ」

「へぇ、玲奈にねぇ」

「なんだよ!だからニヤニヤするなって」

宮沢は心底、嫌そうな顔をする。
さっきから普通に玲奈の名前が出てるんだけど……。

「もしかして、返事もらった?」

気になって聞いてみた。
< 173 / 212 >

この作品をシェア

pagetop