次期社長と訳あり偽装恋愛
お開きの時間になり、居酒屋を出ると藤崎さんが駄々を捏ねていた。
「私も二次会に行くー」
「行かない。藤崎はもう帰る!」
「えー、まだ飲み足りない」
「もう十分だから。立花課長、藤崎を連れて帰ります」
「ありがとう。悪いけど頼むね」
志保さんは止めてあったタクシーに藤崎さんを押し込んだ。
一連の動きがすごくスムーズで、慣れているのかな?と感心するぐらいだった。
「梨音ちゃんは二次会行く?」
「すみません。ちょっと眠くなったのでここで失礼します」
「じゃあ、送ってあげるよ」
「いえ、大丈夫です。野中さんが二次会に行かれなかったらみんな困りますよ」
野中さんに聞かれ、私は断りを入れた。
「野中さん、俺がタクシーで送るんで大丈夫ですよ。あっ、みんな野中さんを呼んでますよ」
宮沢が二次会に行くメンバーを指さすと、こっちに向かって手を振っている。
「悪いな。じゃあ、頼んだよ」
野中さんは足早にみんなの元へ向かった。
「別に送ってくれなくても一人で帰れるから大丈夫だよ」
「中村にお前の面倒をみてやれって頼まれてるからな。こっちも仕方なくだよ」
「へぇ、玲奈にねぇ」
「なんだよ!だからニヤニヤするなって」
宮沢は心底、嫌そうな顔をする。
さっきから普通に玲奈の名前が出てるんだけど……。
「もしかして、返事もらった?」
気になって聞いてみた。