次期社長と訳あり偽装恋愛
「今、大きなプロジェクトが進んでいるんだよ。我が社は海外にも力を入れていることは君も知っていると思うが、新たに海外支店を設立する予定なんだ。それには莫大な資金が必要だ。ここまで言えば君も分かるかな」
海外支店?
社長が言っていた莫大な資金というのは、銀行からの融資が必要不可欠という意味だと思う。
今まで付き合いのあった銀行との仲を深めていれば会社として損はない。
まして、その銀行の娘さんと立花さんの縁談がまとまればすべて上手くいく。
だけど、そこには一つ問題があった。
私が立花さんと付き合っているということ。
社長にとって私という存在は邪魔でしかない。
だから早めに排除しないといけないと思ったんだろう。
「前々から翔真は縁談には興味はないと言ってあまり乗り気ではなかったが、私の後継者として時が来たら受け入れるだろうと思っていた。そろそろ縁談の話を進めようとしていた矢先、付き合っている人がいるから縁談は破棄してくれと言い出した。それが君だ」
社長は鋭い視線を向けてきた。
「翔真に何を馬鹿なことを言っているんだと一蹴したらおとなしく帰っていったよ。自分の立場を理解していれば私に従わざるを得ないだろう」
自信ありげに社長は言い放つ。