次期社長と訳あり偽装恋愛
「翔真が君とすんなりと別れてくれればいいが、このまま付き合いを続ける可能性が無きにしもあらず。不穏な芽は摘み取っておかないといけないからね。君は一個人の問題で会社の発展の邪魔するなんてことが出来るかい?」
「えっ?」
「河野さんのせいで縁談がまとまらなかったらどうするつもりだ?」
私のせいで……?
想像しただけで身体がブルリと震えた。
「もし縁談を破棄したら銀行からの融資はなくなり、海外支社の話もたち消える。それが会社にとってどんな影響を与えるか、考えればすぐに分かるだろう。君は賢い人だと思っている。この縁談は我が社にとっても重要なことなんだよ。君から別れ話を切り出してくれた方が翔真も諦めがつく。未練なんて一切残らないよう、キッパリと別れを告げてくれ」
社長の言葉が胸に突き刺さる。
私と立花さんの未来なんてないんだというのを改めて突きつけられた気がした。
一度、私から偽装恋愛の解消を言い出して立花さんを傷つけている。
一度ならず二度までも私から別れを告げなければならないなんて……。
私はどうしたらいいんだろう。
このまま社長に言われたことを無視していたら、間違いなく会社を辞めないといけなくなる。
私個人なら会社を辞めたって問題はない。
でも、立花さんと付き合い続けたら会社に迷惑をかけることになる。
追い詰められた私の答えはひとつしかない。
「……分かりました」
今にも消え入りそうな声で答える。