次期社長と訳あり偽装恋愛

何とかその日の仕事を終え、家に帰るとソファに倒れ込んだ。
今は何もやる気なんて起きない。
立花さんにどうやって別れを告げたらいいのかボンヤリと考えていた。

どれぐらい時間が経ったのだろう。
ピンポーンとインターホンが鳴り、ノロノロと立ち上がりモニターを見て息をのんだ。
立花さんだ……。

居留守を使ってしまおうか、なんて考えたけど社長の言葉が頭を過る。
私は心の準備も出来ないまま鍵を開けた。

「梨音ちゃん、どうしたの?電話にも出ないから心配したよ」

立花さんは私を抱き寄せる。
この腕の温もりから離れたくない。
だけど、立花さんには縁談の話があるから手放さないといけないんだ。

「心配かけてすみません。スマホをバッグに入れっぱなしで着信に気がつきませんでした」

「何もないならいいんだ」

こんなに私のことを考えてくれている人に別れを告げないといけないなんて辛すぎる。
胸が苦しい。
でも、遅かれ早かれ私と立花さんは別れないといけない。

どうにか私から別れを切り出さなきゃと気持ちを奮い立たせる。

「あの、今忙しくされているのは大きなプロジェクトに携わっているから……ですか?」

今は営業部だけど、先日、立花さんは海外に行っていた。
海外支店をと社長が言っていたので、何かしら関係があるんじゃないかと思ったんだ。
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