次期社長と訳あり偽装恋愛
「そうか……」
立花さんは私の肩に置いていた手を下ろす。
そして何も反論することなく静かに部屋を出て行ってしまった。
ドアが閉まり、私はその場にズルズルとしゃがみ込んだ。
終わったんだ……。
「ごめんなさいっ、ごめん、なさい……」
ポロポロと涙を流しながら何度も謝る。
胸が張り裂けそうなぐらい痛い。
取り返しのつかないことをしてしまった。
私から別れを切り出すなんて心苦しく、やるせない気持ちになる。
しかも、偽装恋愛解消を切り出したのも私。
大好きな人を二度も傷つけてしまった。
それでも、立花さんや会社の為に私は身を引かないといけなかったんだ。
楽しかった思い出が一気に蘇る。
一緒に過ごした時間がどれだけ私にとって大切でかけがえのないものだったかを思い知る。
立花さんはいつも優しくて誰よりも私のことを大事にしてくれていた。
思い出すのは立花さんの笑顔……。
だけど、私が今日で終わりにしようと言った時の立花さんの顔はすごく辛そうだった。
私の言動があんな表情をさせてしまった。
私の選択が間違ってたの?
でも、会社のためにも立花さんの将来のためにも別れるという選択肢以外、私にはなかったんだ。
私はしばらくの間、その場で泣き続けた。