次期社長と訳あり偽装恋愛

本当に彼女がいないのか怪しいところだ。
不意に友田さんの話を思い出した。
立花さんは何でも聞いていいと言っていたので、思い切って口を開いた。

「あの、立花さんは彼女がいなんですよね?」

「俺のプライベートに興味をもってくれた?」

「えっ、いや、そういう訳じゃ……」

しどろもどろになりながら答えると、立花さんはクスクスと笑う。

「彼女はいないけど、気になっている人ならいるよ。だけど俺の片想い。もう五年ぐらいになるかな」

優しそうな表情で話す。
きっと、その女性のことを想っているんだろうなという感じがした。

五年という長い間、片想いをしてるなんて思わなかった。
立花さんはイケメンだし、仕事だって出来る。
勝手な偏見だけど、立花さんぐらいの人は告白したら絶対に両想いになれそうなのに。

「余計な事かもしれないんですけど、気持ちを伝えないんですか?」

「実はそんなに話したことがないんだ」

肩を竦めながら言う。

「えっ?」

「五年前に会った時、その子は俺のことは眼中になかったんだ。それから俺は仕事で海外に行ってしまったからね。こっちに戻ってきて、最近その子と話せるようになったんだ。やっとスタートラインに立てたって感じかな。いきなり告白しても相手を驚かせそうだから、徐々に距離を縮めていこうと思っているんだよ」

「そうなんですね」

立花さんが気になる人か……。
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