次期社長と訳あり偽装恋愛
梨音ちゃんに終わりにしようと言われた時、頭が真っ白になった。
何か言わないとと思っても、俺に縁談の話があったのは事実。
どう足掻いても言い訳にしかならない。
あんな状態で梨音ちゃんを一人にするのは心苦しかったけど、俺はその場を立ち去った。
きっと俺のせいで苦しんだに違いない。
何も出来なかった自分に腹が立つ。
それと同時に、直接梨音ちゃんを傷つけた親父が許せない。
「あと、俺は別れてないからな」
「はいはい。それでどうするんだ?」
「親父と話をつける」
「上手くいくのか?」
「分からない。でも、何度でも話し合うつもりだ。俺には梨音ちゃんが何よりも大切だし、彼女以外の人と結婚するつもりはない」
最悪、実力行使でもしてやろうか。
親父は昔は優しい人だったのに、最近は事業拡大のことしか頭にないみたいだ。
母さんがよく俺に愚痴ってるし。
「そうか。俺も梨音には幸せになってもらいたいからな。梨音の泣き顔はホントに堪えるんだ。頼んだよ、翔真」
マキは兄のような表情で言う。
「言われなくても分かってるよ」
マキも昔、梨音ちゃんといろいろあったから本当の妹のように心配しているんだろう。
俺だって泣かせたい訳じゃない。
元凶の親父と話をつけるしか方法はない。
縁談の話だって元々は親父が勝手に言い出したことだ。
俺は興味がないからと適当に断っていたのがいけなかったんだ。