次期社長と訳あり偽装恋愛
「あっ……」
「何かあったのか?最近の河野、変だぞ。やたら残業しているし、一生懸命仕事に取り組んでいる姿勢はいいけど、無理してないか?」
「無理なんてしてないよ。いろいろと思いついた企画を忘れないうちに形にしたいなと思ってるだけだから」
確かに宮沢の言う通り、仕事ばかりしていた。
何かに打ち込んでいたら、立花さんのことを考えることがないから。
「それならいいけど。あと、玲奈もお前の元気がないって心配してる」
玲奈が?
私の変化に気づいて心配してくれる同期がいてくれたことに嬉しさを覚える。
それと同時に申し訳なさもある。
「心配してくれてありがとう。でも、何でもないから」
私は笑顔を浮かべた。
「本当か?」
「ホントだよ。そうだ!久々に同期会しようよ。最近、やってないよね」
「それならいいけど。そうだな、またみんなで予定を合わせて決めようか」
「うん」
私も落ち込んでばかりはいられない。
少しでも前を向いていかなきゃ。
それにしても、宮沢ってば普通に玲奈って呼んでる。
二人が上手くいっている証拠で喜ばしいことだ。
私は気持を切り替え、まずはパソコンの画面の「t」の字を消していった。