次期社長と訳あり偽装恋愛
宮沢は仕事は出来るけど、性格には難ありだ。
こんな風にいつもちょっかいをかけてくる。
いちいち反応してたらダメなのは長年の付き合いで分かっているので、相手にするだけ無駄。
最初の頃はムカついて言い合いをしたこともあったけど、今は基本スルーしている。
だから宮沢も懲りて止めればいいのに。
「そうだ。近々、例のプロジェクトのサンプルが出来上がるらしい」
宮沢がビジネスバッグから書類を出しながら言う。
さっきの失礼発言の余韻もなく、さらっと話題を変えてくる。
切り替えがホントに早い。
まぁ、宮沢の扱いは慣れているので、こういう時は自分のペースを崩さないのがベストな対応。
「そうなの?早いね」
「ああ。噂によれば、かなりいい出来らしいから楽しみだな」
「そうだね」
そっか、サンプルが……。
思わずニヤけそうになるのを誤魔化すようにジュースを飲み、朝礼の為に席を立った。
***
「梨音ちゃん、悪いんだけど倉庫に行って商品を受け取りに行ってくれない?物流部の比嘉には話をしているから」
「はい、分かりました」
朝礼を終え、会議資料を作成していたら先輩の桐野恵美さんに声をかけられた。
「これ、納品書。よろしくね」
納品書を渡されて席を立つ。
そのままフロアを出てエレベーターに乗った。
一階まで降り、エントランスを抜け会社の敷地内にある倉庫を目指した。